あけまして おめでとう ございます。
今年もよろしくお願いいたします。
年末の忙しさと年始の雑用にかまけて、投稿が1ヶ月半以上あいてしまいましたが、今日から再開します。
さて、昨年の暮れから新年早々にかけて、労働審判という手続きに行ってきました。
労働審判というのは、何年か前に新しくできた制度で、労働者と会社との間の個別の労働問題(賃金だとか、解雇だとか)について、3回の裁判期日で結論を出してしまおうという制度です。
ですから、この労働審判の特徴は、なんといっても早いということです。
普通の裁判というのは、労働問題の事件でもその他の事件でも、訴えを起こしてから30日から40日後くらいに最初の裁判期日が来て、あとは毎月1回のペースで進んでいきます。
ですから、1年間で12回の裁判期日、と言いたいところですが、大体裁判官の夏休み(20日間)と年末年始の時期は裁判期日は入りませんので、1年10回の裁判期日があればいいところでしょうか。
ちにみに、「裁判官は20日も夏休みがあるのか、いいな~」と思われるかもしれませんが、ほとんどの裁判官は、この夏休みの間にせっせと判決を書いているので、実際にはあまり休んでいないようです。
話を元に戻しますが、普通の裁判は、このような1年10回の裁判期日のペースで進み、1つの事件が始まってから終わるまでに、1年から2年かかります。
しかし、労働者は、こんなペースで1年も2年も裁判をやっていたら経済的に干上がってしまうので、逆に言えば、会社側(特に大企業)は経済力があるので、長々と裁判をしても別に困らないので、どうしても裁判をするのは労働者に負担になり、結局泣き寝入りになることが多いのです。
そこで、3回で結論を出す労働審判という制度ができたのです。
この労働審判を申し立てられると、会社側は、第1回の裁判期日の1週間前までに反論と証拠を用意して、裁判所に送らなければなりません。もちろん、第1回の裁判期日に欠席することはできません。
「第1回の裁判期日に欠席することはできません。」なんて当たり前だろうと思われるかもしれませんが、普通の民事裁判では、第1回の裁判期日は裁判所が被告の都合を聞かずに勝手に決めるので、答弁書という書類さえ出しておけば、欠席してもいいのです。
しかも、答弁書は、「原告の請求を棄却するとの裁判を求める。被告の主張は追ってする。」という程度の記載でも許されるのです。
ところが、労働審判では、迅速な審理が特徴ですから、必ず事前に会社側の反論書と証拠を出させるのです。また、欠席も許されません。
今回の労働審判では、私は会社側(と言っても零細企業)の弁護士だったのですが、年末の忙しい時期に、何ページもの反論書と沢山の証拠を作って提出しました。
その上で、当日社長さんを連れて裁判所に行きました。私は、労働審判は初めてだったので、どんな風に審理するのだろうと、少し楽しみにしていたというのが本音です。
しかし、実際に労働審判に参加してみると、「な~んだ。ただの話し合いじゃないか。」という感じでした。
労働審判委員が3人、申立てをした労働者とその弁護士、相手方の会社の代表者とその弁護士の7人で、丸いテーブルを囲んで話し合いをするのです。こういうやり方をラウンドテーブル方式といいます。
もちろん、話し合いと言っても、労働審判委員が仕切るわけですが、なんとか双方が納得できる線で話をまとめようと、ああでもないこうでもないと、いろいろ双方を説得するのです。
全部の労働審判が、こんな話し合いになるのかどうかわかりませんが、労働審判委員が一生懸命説得して話をまとめようとするのには理由があります。
それは、話がまとまらないと、労働審判といういわば判決みたいなものが出るのですが、この労働審判は、どちらかの当事者が異議申し立てをすると、すぐ無効になり、もう一度普通の裁判をやり直すことになるからです。
ですから、当事者、特に会社側にとっては、労働審判が出ても、異議申し立てをすればすぐに時間のかかる普通の裁判に持ち込めますから、何も怖くないのです。
このため、労働審判委員は、労働審判を出しても異議が出れば無効になり、何の解決にもならないので、労働審判を出すのではなく、話し合いによる和解でまとめてしまおうとするのです。
この事件では、第1回の期日に3時間も話し合いをしましたが、結局話はまとまらず、新年早々に第2回をやるということで、終わりました。
しかし、第2回でも、こちらの社長が強気だったので話はまとまらず、結局、痺れを切らした労働審判委員が、労働審判を出してしまいした。
もちろん、審判の内容は、労働者の言い分をほとんど認めて、会社側に支払いを命じるものでしたが、会社側は、その日のうちに異議申立てをして、労働審判を無効にしてしまいました。
この後は、普通の裁判になっていくわけですが、労働審判が出た日から1週間が経過しましたが、何の予定も決まっていません。
今回の申立てをした労働者の人は、それなりに経済的余裕がある(もしかしたら、社長より裕福かもしれない)ので、このような状況でも生活できますが、明日の生活費にも困る労働者にとっては、労働審判はそれほど効果のある制度ではないかもしれません。
もっとも、労働審判の申立て件数はどんどん増えいているということです。
2010年1月22日金曜日
2009年12月4日金曜日
電子手形って何?
今日はITの話題を一つ。
電子手形って知っていますか。
1週間くらい前の日経新聞に、ある銀行が電子手形のサービスを開始するという広告が載っていました。
10月11日の日経新聞にも、「ホンダ、JFE商事など主要企業10社が下請け企業への代金支払いに電子手形を使う方向で検討を進めている。」という記事がありました。
いよいよ電子手形の本格的運用開始という感じです。
でも、電子手形というのは、一体なんでしょう。電子手形というのは、電子記録債権法という法律に基づいた新しい決済サービスです。
今まで、紙の手形で行っていた振出、割引、裏書、取立といったことを、パソコンやFAXといった通信機器でやってしまおうというサービスなのです。
たとえば、B社が、A社に対して、1,000万円の機械を販売したとしましょう。代金は、3ヵ月後の支払いです。今までの決済方法は、A社が3ヵ月後を満期とする手形を振り出すとか、A社が3ヵ月後に銀行振込みをするなどです。
電子手形では、A社は、電子債権記録機関に、「B社は、当社に対して、金額1,000万円、支払期限3ヵ月後という債権を持っています。」というデータを記録します。そして、このデータの記録があったことは、B社に通知されます。これだけで、電子債権は発生します。
この電子債権記録機関というのは、法律の定める基準を満たした民間会社であり、現時点では、三菱東京UFJ銀行の100パーセント子会社の日本電子債権機構株式会社(JENCO)しかありません。
B社としては、A社に対する電子債権を、そのまま支払期日まで持っていてもかまいません。持っているといっても、紙の手形ではありませんので、保管とかは必要ありません。
また、B社は、この電子債権を、銀行に割り引いてもらうこともできるし、B社の下請会社に対する支払いのために譲渡(手形で言えば裏書)することもできます。
そして、これらの割引も譲渡も、パソコンやFAXといった通信機器を使って、会社からできるのです。これまでのように、手形を持って銀行に行ったり、取引先に行く必要はないのです。
このように、電子手形は、紙の手形を持ち歩かなくてもよく、割り引いてもらうために銀行に行くなどの手間がかからないという利点がありますが、電子手形の利点はそれだけではありません。
まず、先ほども述べたように、B社は、手形のような保管・管理の手間がかかりません。
また、紙の手形は、物理的に1枚の紙になっていますので、分割して割り引いてもらったり、譲渡したりはできません。ところが、電子手形はデータですから、B社は、500万円はX社に譲渡して、残りの500万円はY社に譲渡するとか、600万円は銀行に割り引いてもらい、残りの400万円はZ社に譲渡するということができるのです。このように、電子手形では、分割譲渡や分割割引ができるのです。
さらに、手形の場合は、B社が期日まで手形を持っていれば、銀行を通じて取立てにまわさなければなりません。もし、期限までにこの取立をしないと、銀行を通じて取り立てることができなくなります。
しかし、電子手形なら、電子債権記録機関が、支払期日にA社から決済資金を回収して、B社の取引銀行に入金してくれます。
これ以外にも、電子手形にはさまざまな利点があり、中小企業の資金繰りの円滑化に役立つと言われています。チャンスがあれば、是非利用してください。
もちろん、当事務所でも、電子手形の利用に関するご相談をお受けしています。
電子手形って知っていますか。
1週間くらい前の日経新聞に、ある銀行が電子手形のサービスを開始するという広告が載っていました。
10月11日の日経新聞にも、「ホンダ、JFE商事など主要企業10社が下請け企業への代金支払いに電子手形を使う方向で検討を進めている。」という記事がありました。
いよいよ電子手形の本格的運用開始という感じです。
でも、電子手形というのは、一体なんでしょう。電子手形というのは、電子記録債権法という法律に基づいた新しい決済サービスです。
今まで、紙の手形で行っていた振出、割引、裏書、取立といったことを、パソコンやFAXといった通信機器でやってしまおうというサービスなのです。
たとえば、B社が、A社に対して、1,000万円の機械を販売したとしましょう。代金は、3ヵ月後の支払いです。今までの決済方法は、A社が3ヵ月後を満期とする手形を振り出すとか、A社が3ヵ月後に銀行振込みをするなどです。
電子手形では、A社は、電子債権記録機関に、「B社は、当社に対して、金額1,000万円、支払期限3ヵ月後という債権を持っています。」というデータを記録します。そして、このデータの記録があったことは、B社に通知されます。これだけで、電子債権は発生します。
この電子債権記録機関というのは、法律の定める基準を満たした民間会社であり、現時点では、三菱東京UFJ銀行の100パーセント子会社の日本電子債権機構株式会社(JENCO)しかありません。
B社としては、A社に対する電子債権を、そのまま支払期日まで持っていてもかまいません。持っているといっても、紙の手形ではありませんので、保管とかは必要ありません。
また、B社は、この電子債権を、銀行に割り引いてもらうこともできるし、B社の下請会社に対する支払いのために譲渡(手形で言えば裏書)することもできます。
そして、これらの割引も譲渡も、パソコンやFAXといった通信機器を使って、会社からできるのです。これまでのように、手形を持って銀行に行ったり、取引先に行く必要はないのです。
このように、電子手形は、紙の手形を持ち歩かなくてもよく、割り引いてもらうために銀行に行くなどの手間がかからないという利点がありますが、電子手形の利点はそれだけではありません。
まず、先ほども述べたように、B社は、手形のような保管・管理の手間がかかりません。
また、紙の手形は、物理的に1枚の紙になっていますので、分割して割り引いてもらったり、譲渡したりはできません。ところが、電子手形はデータですから、B社は、500万円はX社に譲渡して、残りの500万円はY社に譲渡するとか、600万円は銀行に割り引いてもらい、残りの400万円はZ社に譲渡するということができるのです。このように、電子手形では、分割譲渡や分割割引ができるのです。
さらに、手形の場合は、B社が期日まで手形を持っていれば、銀行を通じて取立てにまわさなければなりません。もし、期限までにこの取立をしないと、銀行を通じて取り立てることができなくなります。
しかし、電子手形なら、電子債権記録機関が、支払期日にA社から決済資金を回収して、B社の取引銀行に入金してくれます。
これ以外にも、電子手形にはさまざまな利点があり、中小企業の資金繰りの円滑化に役立つと言われています。チャンスがあれば、是非利用してください。
もちろん、当事務所でも、電子手形の利用に関するご相談をお受けしています。
2009年11月25日水曜日
あ~、時効だったのに...
労働問題関係の話が2つ続いたので、今日は債権管理の話にします。
消滅時効って知っていますか。
これは、借金や売買代金の支払義務があっても、一定期間経つと支払わなくても良くなるという制度です。
この一定期間というのは、商売上の貸し借りでなければ返済期限から10年、商売上の貸し借りは返済期限から5年です。
先日、ある社長さんから、こんな相談を受けました。
「15年位前に、うまい投資話を友人に紹介したら、友人が乗り気になって、直接その投資先に2000万円くらいを振り込んだんです。しかし、その話がうまくいかなくて、なかなか投資資金がかえってこない。そこで、その友人は、私に、『お前が紹介したんだから、お前が責任を取れ!2000万円の借用書を書け』と言ったのです。あまりにしつこいので、仕方なく形だけのつもりで書いたのですが、最近になって、その友人が、この借用書をたてにとって、2000万円返せと言うのです。返さなければいけませんかね。」
この社長さんの相談からすると、そもそも、その友人から2000万円借りたことになるのかどうか自体疑問ですが、その点で勝てなくても、消滅時効で勝てそうです。
そこで、私が、「その借用書を書いたのはいつですか。返済期限は何とか書きましたか。」と社長さんに聞くと、「書いたのは12年位前です。返済期限は、書いた日から1年後でした。」という答えが返ってきました。
私は、「これなら、時効でいけるかも。」と思い、さらに、「その後一度も返済していませんか。」と聞くと、なんと、社長さんから、「先日、100万円返してしまいました。」という答えが返ってきました。
ここからは問答形式で行きます。
私 「え~!何でそんなことしたの。」
社長「相手が100万円返してくれれば終わりにすると言うから。」
私 「その言葉を何かに書いてもらった?」
社長「いいえ。だって、確かに言ったのです。」
私 「相手が知らないといったらそれまでですよ。何も証明するものが無いのですから。領収書はもらった?但し書きは?」
社長「もらいました。借金の返済として、と書いてもらいました。」
私 「あ~、最悪。それじゃ、借金を認めたことになるじゃないですか。」
この相談では、もしかすると、1年前くらいに消滅時効が成立していて、2000万円を返す必要はなかった可能性が高いのですが、社長さんが、100万円払って、「借金の返済として」と書いた領収書をもらってしまったので、消滅時効を使えなくなってしまいました。
消滅時効というのは、消滅時効が成立した後に、相手の権利を認めてしまうと、使えなくなってしまうのです。
長い間、請求を受けたり支払をしたりしていない借金や買い掛けがあるときは、消滅時効が使えるかもしれませんので、まず、弁護士に相談してから払ってください。
消滅時効って知っていますか。
これは、借金や売買代金の支払義務があっても、一定期間経つと支払わなくても良くなるという制度です。
この一定期間というのは、商売上の貸し借りでなければ返済期限から10年、商売上の貸し借りは返済期限から5年です。
先日、ある社長さんから、こんな相談を受けました。
「15年位前に、うまい投資話を友人に紹介したら、友人が乗り気になって、直接その投資先に2000万円くらいを振り込んだんです。しかし、その話がうまくいかなくて、なかなか投資資金がかえってこない。そこで、その友人は、私に、『お前が紹介したんだから、お前が責任を取れ!2000万円の借用書を書け』と言ったのです。あまりにしつこいので、仕方なく形だけのつもりで書いたのですが、最近になって、その友人が、この借用書をたてにとって、2000万円返せと言うのです。返さなければいけませんかね。」
この社長さんの相談からすると、そもそも、その友人から2000万円借りたことになるのかどうか自体疑問ですが、その点で勝てなくても、消滅時効で勝てそうです。
そこで、私が、「その借用書を書いたのはいつですか。返済期限は何とか書きましたか。」と社長さんに聞くと、「書いたのは12年位前です。返済期限は、書いた日から1年後でした。」という答えが返ってきました。
私は、「これなら、時効でいけるかも。」と思い、さらに、「その後一度も返済していませんか。」と聞くと、なんと、社長さんから、「先日、100万円返してしまいました。」という答えが返ってきました。
ここからは問答形式で行きます。
私 「え~!何でそんなことしたの。」
社長「相手が100万円返してくれれば終わりにすると言うから。」
私 「その言葉を何かに書いてもらった?」
社長「いいえ。だって、確かに言ったのです。」
私 「相手が知らないといったらそれまでですよ。何も証明するものが無いのですから。領収書はもらった?但し書きは?」
社長「もらいました。借金の返済として、と書いてもらいました。」
私 「あ~、最悪。それじゃ、借金を認めたことになるじゃないですか。」
この相談では、もしかすると、1年前くらいに消滅時効が成立していて、2000万円を返す必要はなかった可能性が高いのですが、社長さんが、100万円払って、「借金の返済として」と書いた領収書をもらってしまったので、消滅時効を使えなくなってしまいました。
消滅時効というのは、消滅時効が成立した後に、相手の権利を認めてしまうと、使えなくなってしまうのです。
長い間、請求を受けたり支払をしたりしていない借金や買い掛けがあるときは、消滅時効が使えるかもしれませんので、まず、弁護士に相談してから払ってください。
2009年11月18日水曜日
裏切り者にも賃金はあるの?
同族会社やベンチャー企業などでよくある内紛。
先日も、この不況の中、3年連続増収増益という会社で内紛があり、3人いる役員のうち1人と、従業員の半分以上が辞めて出て行ってしまうというケースがありました。
この会社の社長さんから、「辞めた従業員たちから、退職直前の給料の請求があったのだけれど、うちは従業員がごっそり抜けて売り上げが落ち、大打撃を受けているのに、払う必要があるの?」という相談を受けました。
取締役でも従業員でも、法律上は、原則として辞めるのは自由です。ですから、辞めたからといって、法律的な責任を問われることはありません。
もちろん、辞めた従業員にも賃金は払わなければなりません。
しかし、このケースのように、役員と従業員が示し合わせて、組織的に辞めた場合はちょっと事情が違います。
大体、内紛が起こるのは、儲かる商売をやっている会社です。今回の社長の会社も、3年連続増収増益でした。儲かるからこそ、経営方針、役職、利益の分配の仕方などで対立が生まれるのです。
そして、辞める側は、当然、辞めた後に同じ商売をしようとします。いや、むしろ同じ商売をして、ガッツリ儲けたいから辞めるのです。
役員が、同じ商売をするために、多数の従業員を連れて辞めていった場合、それによって会社が多大な損害を被ったならば、会社は、役員に対して、損害賠償請求をすることが可能です。
従業員に対して、「この会社を辞めて、いっしょにやらないか。」という勧誘は、普通は役員の在職時に行われますが、役員は、会社の利益のために行動する義務を負っていますから、明らかに会社に損害を与えるような行動をとれば、会社に対する背信行為として、法的な責任を問われるのは当然です。
また、一緒に辞めた従業員も、この役員の背信行為に加担したのですから、その結果、会社に損害が発生すれば、損害賠償責任を負う可能性があります。
最近、こうしたケースで、従業員の行為は会社に対する背信行為であるとして、会社の下した懲戒解雇処分を有効とし、退職金を支払わなくてもよいという判決もでています。
辞めた従業員に対して、退職前の賃金の支払いを拒むことはできません。
しかし、会社は、組織的にやめた従業員たちを懲戒解雇にして退職金の支払いを拒否し、さらに、損害賠償を請求するという反撃をすることが可能です。
役員も従業員も、「みんなで辞めれば怖くない。」と思ったら大間違いなのです。
先日も、この不況の中、3年連続増収増益という会社で内紛があり、3人いる役員のうち1人と、従業員の半分以上が辞めて出て行ってしまうというケースがありました。
この会社の社長さんから、「辞めた従業員たちから、退職直前の給料の請求があったのだけれど、うちは従業員がごっそり抜けて売り上げが落ち、大打撃を受けているのに、払う必要があるの?」という相談を受けました。
取締役でも従業員でも、法律上は、原則として辞めるのは自由です。ですから、辞めたからといって、法律的な責任を問われることはありません。
もちろん、辞めた従業員にも賃金は払わなければなりません。
しかし、このケースのように、役員と従業員が示し合わせて、組織的に辞めた場合はちょっと事情が違います。
大体、内紛が起こるのは、儲かる商売をやっている会社です。今回の社長の会社も、3年連続増収増益でした。儲かるからこそ、経営方針、役職、利益の分配の仕方などで対立が生まれるのです。
そして、辞める側は、当然、辞めた後に同じ商売をしようとします。いや、むしろ同じ商売をして、ガッツリ儲けたいから辞めるのです。
役員が、同じ商売をするために、多数の従業員を連れて辞めていった場合、それによって会社が多大な損害を被ったならば、会社は、役員に対して、損害賠償請求をすることが可能です。
従業員に対して、「この会社を辞めて、いっしょにやらないか。」という勧誘は、普通は役員の在職時に行われますが、役員は、会社の利益のために行動する義務を負っていますから、明らかに会社に損害を与えるような行動をとれば、会社に対する背信行為として、法的な責任を問われるのは当然です。
また、一緒に辞めた従業員も、この役員の背信行為に加担したのですから、その結果、会社に損害が発生すれば、損害賠償責任を負う可能性があります。
最近、こうしたケースで、従業員の行為は会社に対する背信行為であるとして、会社の下した懲戒解雇処分を有効とし、退職金を支払わなくてもよいという判決もでています。
辞めた従業員に対して、退職前の賃金の支払いを拒むことはできません。
しかし、会社は、組織的にやめた従業員たちを懲戒解雇にして退職金の支払いを拒否し、さらに、損害賠償を請求するという反撃をすることが可能です。
役員も従業員も、「みんなで辞めれば怖くない。」と思ったら大間違いなのです。
2009年11月12日木曜日
割増賃金は忘れたころにやってくる!!
はじめまして 弁護士の大谷です。
今日からブログを始めます。まずは、簡単な自己紹介から。
平成3年4月に東京弁護士会に弁護士登録し、今年で弁護士18年目です。事務所は、有楽町の東京交通会館11階にある銀座第一法律事務所です。詳しくは、当事務所のホームページを見てください。
このブログでは、日々の弁護士業務の中から、中小企業の経営に役立ちそうな情報を提供していきます。
さて、退職金や割増賃金の請求についての会社側からの相談です。最近、このようなご相談が増えています。
中小企業では、きちんと勤務時間の管理が行われておらず、タイムカードはあるが残業代は支払われていないというケースがよくあります。
「うちは、小さな会社だから残業代なんて払っていないし、そんな余裕はないよ。従業員もそれで納得しているよ。」と言われる社長さんも多いでしょう。
確かに、今在職している従業員は、社長さんと上手くいっている従業員ですから、社長さんの言う通り、「納得している。」かもしれません。しかし、ちょっとトラブルがあって辞めてしまった従業員やリストラで解雇された従業員は、そうは思いません。
何とか、少しでも多く、辞めた会社からお金を取れないかと考えるものです。その社員が、だらだらと仕事もせずに会社に残っていたとしても、タイムカードで退社時間が記録されていると、残業代の支払いを拒否することはなかなか難しいものです。
しかも、時間外労働には割増賃金が発生しますし、未払いの賃金には、退職日から14.6パーセントもの利息(遅延損害金といいます。)がつきます。
割増賃金を上乗せして、退職時からの14.6パーセントもの遅延損害金をつけた残業代を、1年近く前に辞めた従業員から請求されるなどという事例もあります。
本当に必要性があって残業していたのなら、支払うのは仕方ありません。しかし、だらだらと夜遅くまで会社に残っていたり、昼間やるべき仕事を夜に回したりして、退社時間を遅くしているというケースもあります。
今直ぐに、やたらと残業が多い従業員がいないか、その残業は本当に必要なものなのか、その従業員は、昼間どれくらいの仕事をこなしているのか、総点検をしてみてください。
今日からブログを始めます。まずは、簡単な自己紹介から。
平成3年4月に東京弁護士会に弁護士登録し、今年で弁護士18年目です。事務所は、有楽町の東京交通会館11階にある銀座第一法律事務所です。詳しくは、当事務所のホームページを見てください。
このブログでは、日々の弁護士業務の中から、中小企業の経営に役立ちそうな情報を提供していきます。
さて、退職金や割増賃金の請求についての会社側からの相談です。最近、このようなご相談が増えています。
中小企業では、きちんと勤務時間の管理が行われておらず、タイムカードはあるが残業代は支払われていないというケースがよくあります。
「うちは、小さな会社だから残業代なんて払っていないし、そんな余裕はないよ。従業員もそれで納得しているよ。」と言われる社長さんも多いでしょう。
確かに、今在職している従業員は、社長さんと上手くいっている従業員ですから、社長さんの言う通り、「納得している。」かもしれません。しかし、ちょっとトラブルがあって辞めてしまった従業員やリストラで解雇された従業員は、そうは思いません。
何とか、少しでも多く、辞めた会社からお金を取れないかと考えるものです。その社員が、だらだらと仕事もせずに会社に残っていたとしても、タイムカードで退社時間が記録されていると、残業代の支払いを拒否することはなかなか難しいものです。
しかも、時間外労働には割増賃金が発生しますし、未払いの賃金には、退職日から14.6パーセントもの利息(遅延損害金といいます。)がつきます。
割増賃金を上乗せして、退職時からの14.6パーセントもの遅延損害金をつけた残業代を、1年近く前に辞めた従業員から請求されるなどという事例もあります。
本当に必要性があって残業していたのなら、支払うのは仕方ありません。しかし、だらだらと夜遅くまで会社に残っていたり、昼間やるべき仕事を夜に回したりして、退社時間を遅くしているというケースもあります。
今直ぐに、やたらと残業が多い従業員がいないか、その残業は本当に必要なものなのか、その従業員は、昼間どれくらいの仕事をこなしているのか、総点検をしてみてください。
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