あけまして おめでとう ございます。
今年もよろしくお願いいたします。
年末の忙しさと年始の雑用にかまけて、投稿が1ヶ月半以上あいてしまいましたが、今日から再開します。
さて、昨年の暮れから新年早々にかけて、労働審判という手続きに行ってきました。
労働審判というのは、何年か前に新しくできた制度で、労働者と会社との間の個別の労働問題(賃金だとか、解雇だとか)について、3回の裁判期日で結論を出してしまおうという制度です。
ですから、この労働審判の特徴は、なんといっても早いということです。
普通の裁判というのは、労働問題の事件でもその他の事件でも、訴えを起こしてから30日から40日後くらいに最初の裁判期日が来て、あとは毎月1回のペースで進んでいきます。
ですから、1年間で12回の裁判期日、と言いたいところですが、大体裁判官の夏休み(20日間)と年末年始の時期は裁判期日は入りませんので、1年10回の裁判期日があればいいところでしょうか。
ちにみに、「裁判官は20日も夏休みがあるのか、いいな~」と思われるかもしれませんが、ほとんどの裁判官は、この夏休みの間にせっせと判決を書いているので、実際にはあまり休んでいないようです。
話を元に戻しますが、普通の裁判は、このような1年10回の裁判期日のペースで進み、1つの事件が始まってから終わるまでに、1年から2年かかります。
しかし、労働者は、こんなペースで1年も2年も裁判をやっていたら経済的に干上がってしまうので、逆に言えば、会社側(特に大企業)は経済力があるので、長々と裁判をしても別に困らないので、どうしても裁判をするのは労働者に負担になり、結局泣き寝入りになることが多いのです。
そこで、3回で結論を出す労働審判という制度ができたのです。
この労働審判を申し立てられると、会社側は、第1回の裁判期日の1週間前までに反論と証拠を用意して、裁判所に送らなければなりません。もちろん、第1回の裁判期日に欠席することはできません。
「第1回の裁判期日に欠席することはできません。」なんて当たり前だろうと思われるかもしれませんが、普通の民事裁判では、第1回の裁判期日は裁判所が被告の都合を聞かずに勝手に決めるので、答弁書という書類さえ出しておけば、欠席してもいいのです。
しかも、答弁書は、「原告の請求を棄却するとの裁判を求める。被告の主張は追ってする。」という程度の記載でも許されるのです。
ところが、労働審判では、迅速な審理が特徴ですから、必ず事前に会社側の反論書と証拠を出させるのです。また、欠席も許されません。
今回の労働審判では、私は会社側(と言っても零細企業)の弁護士だったのですが、年末の忙しい時期に、何ページもの反論書と沢山の証拠を作って提出しました。
その上で、当日社長さんを連れて裁判所に行きました。私は、労働審判は初めてだったので、どんな風に審理するのだろうと、少し楽しみにしていたというのが本音です。
しかし、実際に労働審判に参加してみると、「な~んだ。ただの話し合いじゃないか。」という感じでした。
労働審判委員が3人、申立てをした労働者とその弁護士、相手方の会社の代表者とその弁護士の7人で、丸いテーブルを囲んで話し合いをするのです。こういうやり方をラウンドテーブル方式といいます。
もちろん、話し合いと言っても、労働審判委員が仕切るわけですが、なんとか双方が納得できる線で話をまとめようと、ああでもないこうでもないと、いろいろ双方を説得するのです。
全部の労働審判が、こんな話し合いになるのかどうかわかりませんが、労働審判委員が一生懸命説得して話をまとめようとするのには理由があります。
それは、話がまとまらないと、労働審判といういわば判決みたいなものが出るのですが、この労働審判は、どちらかの当事者が異議申し立てをすると、すぐ無効になり、もう一度普通の裁判をやり直すことになるからです。
ですから、当事者、特に会社側にとっては、労働審判が出ても、異議申し立てをすればすぐに時間のかかる普通の裁判に持ち込めますから、何も怖くないのです。
このため、労働審判委員は、労働審判を出しても異議が出れば無効になり、何の解決にもならないので、労働審判を出すのではなく、話し合いによる和解でまとめてしまおうとするのです。
この事件では、第1回の期日に3時間も話し合いをしましたが、結局話はまとまらず、新年早々に第2回をやるということで、終わりました。
しかし、第2回でも、こちらの社長が強気だったので話はまとまらず、結局、痺れを切らした労働審判委員が、労働審判を出してしまいした。
もちろん、審判の内容は、労働者の言い分をほとんど認めて、会社側に支払いを命じるものでしたが、会社側は、その日のうちに異議申立てをして、労働審判を無効にしてしまいました。
この後は、普通の裁判になっていくわけですが、労働審判が出た日から1週間が経過しましたが、何の予定も決まっていません。
今回の申立てをした労働者の人は、それなりに経済的余裕がある(もしかしたら、社長より裕福かもしれない)ので、このような状況でも生活できますが、明日の生活費にも困る労働者にとっては、労働審判はそれほど効果のある制度ではないかもしれません。
もっとも、労働審判の申立て件数はどんどん増えいているということです。
2010年1月22日金曜日
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