2009年11月18日水曜日

裏切り者にも賃金はあるの?

 同族会社やベンチャー企業などでよくある内紛。

 先日も、この不況の中、3年連続増収増益という会社で内紛があり、3人いる役員のうち1人と、従業員の半分以上が辞めて出て行ってしまうというケースがありました。

 この会社の社長さんから、「辞めた従業員たちから、退職直前の給料の請求があったのだけれど、うちは従業員がごっそり抜けて売り上げが落ち、大打撃を受けているのに、払う必要があるの?」という相談を受けました。

 取締役でも従業員でも、法律上は、原則として辞めるのは自由です。ですから、辞めたからといって、法律的な責任を問われることはありません。

 もちろん、辞めた従業員にも賃金は払わなければなりません。

 しかし、このケースのように、役員と従業員が示し合わせて、組織的に辞めた場合はちょっと事情が違います。

 大体、内紛が起こるのは、儲かる商売をやっている会社です。今回の社長の会社も、3年連続増収増益でした。儲かるからこそ、経営方針、役職、利益の分配の仕方などで対立が生まれるのです。

 そして、辞める側は、当然、辞めた後に同じ商売をしようとします。いや、むしろ同じ商売をして、ガッツリ儲けたいから辞めるのです。

 役員が、同じ商売をするために、多数の従業員を連れて辞めていった場合、それによって会社が多大な損害を被ったならば、会社は、役員に対して、損害賠償請求をすることが可能です。

 従業員に対して、「この会社を辞めて、いっしょにやらないか。」という勧誘は、普通は役員の在職時に行われますが、役員は、会社の利益のために行動する義務を負っていますから、明らかに会社に損害を与えるような行動をとれば、会社に対する背信行為として、法的な責任を問われるのは当然です。

 また、一緒に辞めた従業員も、この役員の背信行為に加担したのですから、その結果、会社に損害が発生すれば、損害賠償責任を負う可能性があります。

 最近、こうしたケースで、従業員の行為は会社に対する背信行為であるとして、会社の下した懲戒解雇処分を有効とし、退職金を支払わなくてもよいという判決もでています。

 辞めた従業員に対して、退職前の賃金の支払いを拒むことはできません。
 しかし、会社は、組織的にやめた従業員たちを懲戒解雇にして退職金の支払いを拒否し、さらに、損害賠償を請求するという反撃をすることが可能です。

 役員も従業員も、「みんなで辞めれば怖くない。」と思ったら大間違いなのです。

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